研究課題
基盤研究(C)
加齢に伴って骨内では脂肪組織が増加し、骨組織が減少する。このいわゆる骨髄肥満(脂肪髄化)の進行にアディポカイン産生異常、遊離脂肪酸による脂肪毒性などの脂質代謝異常が関与している可能性を考慮し、本事業を行ってきた。本年度は、脂質代謝異常を誘導するため、グルココルチコイド(デキサメサゾン)を骨芽細胞-骨細胞系ならびに骨髄脂肪組織に投与し、さらに、脂質代謝改善薬であるピタバスタチンを投与して、その影響を検討した。骨芽細胞-骨細胞系に対しては、濃度依存性に増殖能・遊走能の低下、アポトーシスの増加、骨細胞分化の抑制、細胞外基質との結合性の低下を認めた。一方、骨髄脂肪組織に対しては、組織片周囲に新生する紡錘形の間質細胞に占める前脂肪細胞の割合が増加した。そこにピタバスタチンを投与すると、濃度依存性に前脂肪細胞の割合の低下がみられた。この結果は、ピタバスタチンが、デキサメサゾンによる骨髄内間葉系幹細胞からの脂肪細胞分化亢進を抑制することを示唆している。これまでの研究により、脂肪組織は液性因子を介して骨芽細胞-骨細胞分化系列に対して、増殖抑制ならびに分化抑制を来すとともに骨芽細胞・骨細胞は脂肪細胞からの前脂肪細胞新生を抑制すること、レプチンを始めとするアディポカインの産生を変化させることが明らかとなった。すなわち骨芽細胞・骨細胞は骨髄脂肪に作用し、骨髄肥満を抑制する作用があると考えられる。また、スタチン系の薬剤は、骨髄脂肪組織における脂肪細胞分化の抑制とともに骨内の脂質代謝を改善し骨形成能の促進を誘導できる可能性があり、骨粗鬆症の新規予防・治療法として期待される。今後、検体数を増やすとともに、アディポカインや酸化ストレスマーカーの発現など脂肪細胞の機能に着目した研究、至適濃度の検討、他臓器に対する影響を含めた更なる研究が必要である。
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