研究課題
挑戦的萌芽研究
<目的>がん治療を著しく難しくしている要因に、腫瘍の転移や多剤薬剤耐性があるが、 これらの原因として、がん細胞のゲノム不安定性がある。本研究は、ゲノム不安定性を示すがん細胞を標的とした抗がんアプローチの確立を目指すものである。ヒトのがんの大部分が、ゲノム不安定性(染色体数の増減および転座の頻度上昇)を示す。一般 に、ゲノムの不安定性が高いがん細胞ほど悪性度が高い傾向にある。このゲノム不安定性はがん細胞に特徴的なものであり、正常細胞にはほとんど見られない。従ってゲノム不安定性は、がん細胞選択性の標的となり得る性質である。しかしながらこれまでに、ゲノム不安定性をがんの標的と捉えた創薬研究は、未だ成功していない。その最大の要因は、ゲノム不安定性を呈する適切なモデル細胞株の不在である。<結果>ゲノムが安定な大腸がん細胞株 HCT116(二倍体)の染色体を“倍化”させる事により、 ゲノム不安定性のモデルとなるがん細胞株(四倍体)の樹立に成功した。実際、四倍体 HCT116 は二倍体 HCT116 に比べて、細胞分裂時の染色体分配の失敗の頻度が顕著に上昇した(Anaphase FISH により定量)。また染色体の構造的異常(転座、マーカー染色体、リング染色体など)の出現頻度も上昇した。この四倍体細胞株を使い、ゲノム不安定性を示す細胞を特異的に殺すshRNAをスクリーニングした。対照には二倍体細胞株を用いた。<今後の展開> スクリーニングの結果得られたshRNAについて、その効果の再現性やオフターゲット効果の有無を今後検討していく必要がある。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Biol Chem
巻: 289 号: 7 ページ: 3950-9
10.1074/jbc.m113.531178