差別概念の哲学的な分析論の主要な議論を検討した。①被差別者に与える害や不利益に注目する帰結主義的な立場としての不利益説、②差別者の動機や悪意に注目する悪意説、③帰結にも意図にも還元できない「意味」があるという意味説を検討した。現在の議論では不利益説が主流である。不利益説は差別がもたらす害悪の大きさに関する直観にも適合しており一定の説得力がある。本研究では、しかしこの立場では十分に差別の悪質さを分析することはできないことを明らかにし、意味説に一定の利点があることを確認した。 差別の悪質さを評価するための規範的な根拠の解明が今後の課題である。
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