研究課題
若手研究(B)
原子力発電の安全性や放射線被ばくのリスクをめぐる論争では、政府側に比べてそれを批判する側は、科学的資源へのアクセスという点で不利な立場におかれることが多い。そのことが、いわゆる「御用学者」への根強い批判の背景になってきた。こうした不均衡はなぜ生じるのか。科学社会学のアプローチから、インタビューや資料分析、量的ネットワーク分析などを用いて分析した。本研究によって、政府方針から外れる議論が学者集団から出にくい構造的要因や、学術誌レベルでは多様性や不確実性が言及される場合でも、政策決定をめぐる論議の中では見えにくくなるメカニズムを明らかにすることができたと考える。
研究の結果、(1)知の生産の局面においては、周辺分野の学者を原子力のコミュニティへと引き込む動きと、逆に、隣接分野の学者が「自分は原子力と関係ない」と自己規定する動きが併存しており、結果として原子力に対して批判的な学者が少なくなっていること、(2)知の流通・利用の局面においては、「負の自己言及」を欠くことで、学術論文のレベルにおける多様性・不確実性が不可視化されていくメカニズムがあること、などが明らかになった。本研究によって、知の不確実性や批判をふくむ多様性に開かれた議論を可能にする社会的なしくみを構想する上での重要な手がかりを得ることができたと考える。
すべて 2019 2018 2017 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) 図書 (1件)
年報 科学・技術・社会
巻: 28
130007919245
社会学評論
巻: 66(3) ページ: 412-428
130005439879
科学
巻: 84(5) ページ: 494-497
East Asian Science, Technology and Society
巻: 8-4 号: 4 ページ: 503-506
10.1215/18752160-2821439