今後,CCDカメラと同等の感度で高フレームレートでの撮影が可能なCMOSカメラが,小惑星やスペースデブリといった移動天体の観測で活躍することが期待されている.従って地上の小口径の望遠鏡にとって,CMOSカメラとの組み合わせにより,移動天体の観測機会が今後増えていくことが期待される.このような状況を想定して,大量の時系列データが逐次得られる条件下で効果を発揮するベイズ統計的手法により,画像上を移動しながら微弱な光で写るスペースデブリ(微光デブリ)について,その位置や速度などの状態を逐次推定し追跡する方法について基礎検討を開始した. 本年度は,Track-before-Detectという物体追跡方法を用いた,微光デブリの逐次追跡手法を提案した.画像上のデブリの位置は直接観測せずに輝度値のみを観測することで,デブリの位置を推定する数学モデルを設計した.この数学モデルをデブリ画像に対して実際に解くために,最適化手法により初期値の候補を狭め.数学モデルを解く粒子フィルリングという手法によりデブリの位置を逐次推定するアルゴリズムを提案した.単一の微光デブリが映っている時系列画像に対して提案手法を適用した結果,微光デブリに関する先見情報が欠けている場合においても微光デブリは追跡可能であることが明らかになった. 今後,複数物体の追跡や物体の存在状況を判定する機能を追加し,更に複雑な条件における追跡能力を得るために本研究を発展させていく.
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