研究課題
若手研究(B)
がん化学療法に伴う味覚障害は患者のQOLを低下させるため、臨床上問題となっている。本研究では、これまでに白金系抗がん剤の一つであるoxaliplatinに着目し、抗がん剤誘発性の味覚障害の特性について解析してきた。しかしながら、その他の抗がん剤でも味覚障害が報告されている。その中で、多発性骨髄腫の治療に用いられるbortezomibは味覚障害を誘発すると報告されているが、その発症機序を含め詳細は不明である。そこで昨年度に引き続き本研究では bortezomib 投与マウスを用い、その味覚感受性への影響について検討した。その結果、control群と比較して、酸味溶液に対するlick ratioはbortezomib投与 16日目以降で有意に減少し、さらにそのIC50は23及び26日目で有意に低かった。味蕾の形態、Ⅲ型味細胞の数、酸味受容と関わることが報告されているPKD1L3及びPKD2L1のmRNA発現量は2群間での差異は認められなかった。一方で、PKD2L1のタンパク質発現量はbortezomib投与群において有意に高かった。加えて、bortezomibの投与中止後 3 日目以降で control群とbortezomib投与群とのlick ratioの差は消失した。以上の結果より、bortezomibの繰り返し投与によりマウスの酸味感受性は可逆的に増大し、これはPKD2L1の発現量の変化に起することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
薬理作用機序の異なる抗がん剤での味覚障害の特性の違いを動物実験レベルで明らかにすることに成功したため。
今後は、これまでとは異なる作用機序の抗がん剤での影響についての検討をすることにより、抗がん剤誘発性の味覚障害の実態解明をすすめる予定である。
復職後は速やかに研究計画を遂行するため、動物実験のための消耗品を購入のために使用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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