研究課題
若手研究(B)
皮膚創傷治癒における12-HHT/BLT2の役割について当研究室では、BLT2が皮膚表皮細胞に発現すること、BLT2の生体内リガンドが12-HHT という脂肪酸であることを明らかにしてきた。12-HHTはシクロオキシゲナーゼ(COX)およびトロンボキサンA2合成酵素(TxA2S)依存的に産生されることが知られている。これまでの申請者による予備的検討では、BLT2欠損およびCOX阻害剤であるアスピリンの投与により皮膚の創傷治癒が遅延することが明らかとなっている。皮膚創傷部位の滲出液を採取しLC-MS/MSを用いて解析した結果、12-HHTが創傷後時間依存的に蓄積すること、アスピリンの投与により蓄積が消失することが明らかとなった。更に、TxA2S欠損マウスにおいても創傷治癒の遅延が観察されたことから、12-HHT/BLT2シグナルは創傷治癒を促進することが示唆された。また皮膚組織の解析より、BLT2欠損やアスピリン投与は真皮ファイブロブラストによる傷口収縮作用には影響を与えず、表皮ケラチノサイトによる再上皮化を遅延することが明らかとなった。そこで、BLT2過剰発現およびBLT2欠損ケラチノサイトを用いてin vitroの解析を行った結果、12-HHT/BLT2シグナルはケラチノサイトの増殖には影響を与えず、NFκB-TNFα-MMP9経路を活性化することでケラチノサイトの移動を亢進させることが明らかとなった。糖尿病において皮膚の創傷治癒が遅延することが知られており、深刻な問題となっている。糖尿病モデルマウス(db/db)を用いてBLT2作動薬の塗布による皮膚創傷への治癒効果を検討したところ、皮膚の再上皮化が亢進して創傷治癒を促進した。以上のことから、BLT2作動薬は難治性皮膚創傷の新規治療薬となり得るのではないかと考えている。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
J Exp Med
巻: 211 号: 6 ページ: 1063-1078
10.1084/jem.20132063
実験医学 カレントトピックス
巻: 32 ページ: 2267-2270
Allergology International
巻: -