研究課題
若手研究(B)
高カルシウム血症等の治療薬であるゾレドロン酸(ZOL)が、ヒト悪性中皮腫細胞に対して引き起こす細胞傷害のメカニズムを明らかにした。ZOLはトポイソメラーゼⅡのATPase活性を阻害することで細胞周期(S期)停止を誘導した。更に、低分子G蛋白であるRabファミリー蛋白のプレ二ル化を阻害することで、カスパーゼ依存的な細胞死を誘導した。ZOLは胸腔内中皮腫モデルマウスに対して抗腫瘍効果を示した。ZOLを胸腔内に直接投与することにより、腫瘍形成を顕著に抑制した。また、ZOLのヒトに対する臨床投与量4 mgをマウスに換算した15 μgによっても、腫瘍重量を半減させた。同モデルマウスにおいて、悪性中皮腫の第一選択薬であるシスプラチンとZOLの併用投与は相乗的な抗腫瘍効果を誘導した。この相乗効果は、ZOLがシスプラチンによるp53依存的な細胞傷害を増強することによって引き起こされた。一方、同じく第一選択薬であるペメトレキセドとZOLの併用投与は相乗効果を示さなかった。p53経路を活性化するp53発現型アデノウイルス(Ad-p53)、MDM2阻害剤(nutlin-3a)、HSP90阻害剤(17-AAGあるいは17-DMAG)は悪性中皮腫に対して細胞傷害を誘導した。Ad-p53とnutlin-3aはp53依存的に細胞周期(G1期あるいはG2/M期)停止や、カスパーゼの活性化を介する細胞死を引き起こした。一方、HSP90阻害剤はMDMXを阻害することによりp53経路を活性化したが、PI3K-AKT経路の阻害によるp53非依存的な細胞傷害を誘導した。シスプラチンと同様、Ad-p53はZOLとの併用投与により、p53依存的な相乗効果を誘導した。以上のことから、ZOLはp53を活性化する分子標的薬と併用することにより、悪性中皮腫に対して相乗的な抗腫瘍効果を誘導できることを明らかにした。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Cell Death Dis
巻: 5 号: 11 ページ: e1517-e1517
10.1038/cddis.2014.475