研究実績の概要 |
DSM-IVにおける大うつ病性障害を満たし、抗うつ薬の投与がない、もしくは8週間以上投薬が固定されている患者を対象として、安静時ならびに課題時のMRIの撮像を行った。その後、厚生労働省のマニュアルに基づいた認知行動療法を、訓練を受けた医師もしくは臨床心理士が個人セッションとして、1回40-50分、計16回施行した。 計20名がエントリーされ、2名が脱落し、撮像が安定して得られた16名を対象として解析を行った。画像の前処理ならびに統計学的解析には、FSL(http://www.fmrib.ox.ac.uk/fsl)を使用した。統計処理として、クラスター閾値をZ>2.3、有意閾値をp<0.05とした。安静時はBiswalらが行った方法(Biswal BB et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2010)に基づき、関心領域を後部帯状回/楔前部(PCC/PC;-5,-49,40)とし、PCC/PCと機能的結合性を有する部位を全脳解析で得たうえで、混合効果モデルを用いてQIDSの得点の改善率との相関を求めた。課題時fMRIは、身体や気分、所持品について自己参照する課題(Terasawa Y et al., Human Brain Mapping, 2013)を用い、安静時と同様に混合効果モデルを用いた統計解析を行い、QIDSの改善率と相関する領域を求めた。 結果、安静時においてはPCC/PCと腹内側及び背内側前頭前野との機能的結合性と改善率との逆相関が認められた。さらに、自己の身体ならびに気分を参照している際の島領域における脳活動と、改善率が相関することが明らかとなった。デフォルトモードネットワークにおける楔前部ないし後部帯状回と内側前頭前との機能的結合性が強い場合や、自己を参照する脳活動が低い場合には認知行動療法の効果が得られにくい可能性が示唆された。
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