研究実績の概要 |
2型糖尿病治療薬, メトホルミン塩酸塩(Met)の内服患者は発癌率が有意に低く,その抗腫瘍効果に着目した。この機構にはAMP 活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が重要で, PI3K/Akt/mTOR シグナル伝達系の mTORの阻害による抗腫瘍効果が報告されている。口腔癌の骨浸潤における腫瘍増殖は破骨細胞性骨吸収により遊離したIGF-1等が腫瘍を活性化する。骨浸潤した癌に対しては抗癌剤療法 が奏功しにくく, 骨微小環境下での癌細胞を制御するメカニズムの解明が重要課題である。IGF-1はmTOR経路を活性化し口腔癌の増殖に関与するとされ, AMPK の活性化作用を持つMetを用いてAMPK を標的とした口腔癌の制御機構の解析を計画した。 口腔癌切除標本で癌細胞にIGF-1, mTORの高発現を認めた。口腔癌細胞の移植モデルではMet投与群で腫瘍増殖の抑制を認め,投与群の腫瘍組織ではTunel陽性細胞数の増加とPCNA陽性細胞の減少を認めた。口腔癌細胞株SASによるin vitroの検討ではWB法でSASのAMPKのリン酸化はIGF-1添加により抑制, mTOR等のリン酸化は促進された。Met投与群ではIGF-1添加後のAMPKのリン酸化を抑制せず促進した。MTTアッセイでIGF-1添加によりSASの細胞増殖は促進, Met濃度依存的に抑制された。Met投与群で有意なTunel陽性細胞の増加を認め, SASのアポトーシスへの誘導が示唆されたが, WB法によるcleaved Caspase-3の発現は認めず,異なる機序による増殖抑制効果を考え,LC3による免疫蛍光染色を行った。Met投与群においてLC3の発現を認め, SASへのオートファジー誘導が示唆された。
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