平成26年度は本研究計画の初年度であった。複雑ネットワーク上における移流拡散的輸送が系にもたらす不安定化、およびパターン形成に関して、以下に述べる研究を行なった。 1.反応因子の移流輸送が系に不安定化をもたらすことを数値実験により確認した。また、線形安定性解析を通して、不安定化がおこる条件を解析的に明らかにするとともに、活性因子および不活性因子の輸送による不安定化の違いを議論した。さらに、不安定化が超臨界分岐に属する場合について、不安定化に伴い自己組織化的に形成されるパターンを、移流行列の固有ベクトルを用いて説明できることを示した。これにより、移流誘起不安定化に伴い形成されるパターンは、移流強度に関して局在性を持つこと、静的なパターンは移流強度が最も高いノードにのみ局在することなどが明らかになった。 2.マルチプレックスネットワーク(多層ネットワーク。従来の単層ネットワークを一般化したもの。)において、活性因子・不活性因子がそれぞれ異なる層のネットワーク上を移動する系の安定性解析を行なった。数値実験により、反応因子の拡散的移動が系に不安定化をもたらすことを確認した。また、系の安定性を、各ネットワークノードの次数(リンクの数)を用いて評価する方法を提案した。これを通して、平成27年度より開始する挑戦的萌芽研究(研究課題番号:15K12111)に向けて予備的な知見を得ることができた。 上記の結果について、内容を論文にまとめ英文雑誌に投稿するとともに、国内外の会議において講演を行なった。
|