研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模アスリートコホートにおける競技パフォーマンス、トレーニング効果およびスポーツ傷害に関連する遺伝要因について検討することであった。初年度である26年度は運動パフォーマンス、トレーニング効果やスポーツ傷害などに関連する遺伝子多型に関するシステマティックレビューを行い、日本人において検出頻度が高い多型(マイナーアレル頻度が5%以上)を抽出した。その結果、ACTN3 R577X, ACE I/D, MCT1 A1470Tなど計20個ほどの遺伝子を選定した。 現在、1,089名のアスリート(陸上、レスリング、体操、アメリカンフットボール、バスケットボールなど)のDNAを抽出を行い、多型を分析中である。今後、ターゲットとなる遺伝子多型を解析し また、上記の本研究の対象者から199名のレスリング選手を対象としてMCT1遺伝子A1470T多型と競技実績との関連性を検討した。ケースコントロール研究を行った結果、MCT1遺伝子のAA型を有するレスリング選手の割合は、コントロールと比較して有意に高いことが明らかとなった(OR; 1.40, 95%CI;1.02-1.93, p=0.037)。さらに46名のレスリング選手を対象に無酸素性テスト時の血中乳酸濃度の測定を行ったところ、AA型を有する選手は血中乳酸濃度が低く推移することが示された。このことから、MCT1遺伝子多型はレスリング選手の競技パフォーマンスに関連する可能性が示唆された。 今後は、その他の競技種目における競技実績、競技種目、体力要素および既往歴等の調査を行い、遺伝子多型との関連性を検討する。
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