本研究は、インド最北端ラダックにおけるチベット仏教徒による仏教ナショナリズムの展開過程を明らかにすることを目的として行った。方法として、先行研究および資料の検討を行い、フィールドワークを行って資料を補完した。その結果、以下の2点が明らかになった。まず「仏教徒ラダック人」というネーションは、カシミール改宗仏教徒により成立の契機を与えられ、その後ラダックの仏教徒組織に引き継がれ、インド独立、J&K州への併合を経験し、権利回復運動として展開していくなかで強固になった。次に、この運動は仏教徒コミュニティの内部においては仏教伝統を復興させる生活改善運動という面も併せ持っていた。
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