研究実績の概要 |
本研究は、近年キラルな結晶構造をもつ磁性体において観測されたナノ磁気構造体“スキルミオン”を情報担体として用いた新規不揮発性メモリ開発に向けて実現しなければならない基本動作の1つの書込/消去を実験的に実証することを目的としている。 スキルミオンは数nm-数百nmの大きさの渦状の磁気構造体であり、この磁気構造体の有無により情報記録を、外部刺激を用いたスキルミオンの運動により情報伝達を行えるような次世代記憶媒体の構成要素となり得る潜在性を有している。特に、そのナノメートルスケールのサイズにより情報の高密度化が、小電流駆動性により省電力化がそれぞれ期待されている。さらに、スピン配列のトポロジカルな幾何学的性質から、伝導電子が仮想的な巨大磁場(創発磁場)を受け、トポロジカルホール効果と呼ばれる新奇物性も観測されている。 本研究における平成26年度後期の実績としては、(i) スキルミオンホスト物質FeGeのエピタキシャル薄膜の作製と電子線リソグラフィー法によるナノ加工回路作製の成功、(ii) それらのスキルミオンナノ回路における単一スキルミオンの生成(書込)と消滅(消去)の磁場による制御、(iii) 単一スキルミオン生成消滅過程のトポロジカルホール効果による電気的検出(読出)、(iv) 上記実験成果を論文として出版 [N. Kanazawa et al., Phys. Rev. B 91, 041122(R) (2015).]の4項目が主に挙げられる。これらの結果は、スキルミオンメモリのひな形作製の実験的実証の第一歩であり、現在激しい競争が繰り広げられているスキルミオンメモリ開発に対して重要な意義を示した。
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