本研究は、材料工学的視点から、患者個々の骨に適合した力学機能を発揮しうる革新的インプラントの創製を目指すものである。骨において最も重要な特性である骨強度に対しては、骨密度よりも骨組織異方性(アパタイトの配向性)が重要な役割を担っている。したがって、正常な骨配向化組織が有する力学機能を発揮する、骨類似の異方性を積極的に付与した革新的インプラントの開発が不可欠である。その上で、患者個々に最適な力学機能を3次元的にインプラント材料に付与する技術の確立が重要になる。本研究では金属積層造形技術に着目し、構造異方性のみならず組織異方性を同時に制御することで、インプラントへの適用を目的とした骨類似の異方性を有する金属材料の創製を行った。 高力学特性・高信頼性を担保する材料作製のための積層造形技術の確立として、生体内で使用されるインプラント材料に対しては不可欠な要素である高信頼性・高安全性を担保するための積層造形技術の探索を行った。造形パラメータのうち、ビーム出力およびビームの走査速度・走査間隔を最適化することで、相対密度99%以上の緻密体の作製に成功した。金属組織異方性の観点からは、ビームの入熱量ならびに走査条件によって金属組織が変化することを見出し、特に骨類似の一方向異方性を付与することに成功した。
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