本研究では、(1)無麻酔下かつ無拘下の動物個体における行動発現時の青斑核ノルアドレナリン(NA)神経活動を検出する方法の独自開発、(2)光遺伝学を用いて青斑核NA神経の活動のみを任意のタイミングで調節するin vivo実験系の立ち上げを計画していた。まず、ドパミン-β-水酸化酵素(DBH)プロモータを用いてDBH神経細胞特異的にtTA(テトラサイクリントランスアクチベータ)を発現するDBH-tTAマウス、およびtTA依存的に遺伝学的カルシウム蛍光プローブ(GCaMP6)、チャネルロドプシン2(ChR2)、アーキロドプシン(ArchT)を発現可能なマウス(TetO-GCaMP6マウス、TetO ChR2マウス、TetO ArchTマウス)を作成した。(1)において、皮質神経細胞にGCaMP6を発現させKClを作用させたところ、神経活動に伴うカルシウム応答をGCaMP6の蛍光変化により検出することに成功した。次に、オレキシン神経特異的にGCaMP6を発現させたマウスを作成し、そのマウスの尾部へ機械的な痛み刺激を与えたところ、刺激と呼応した蛍光変化を検出することに成功した。(2)においては、DBH-tTAマウスをTetO ChR2マウス、TetO ArchTマウスと交配させ、NA神経細胞特異的にChR2を発現させたマウス、ArchTを発現させたマウスをそれぞれ作成した。急性スライスを用いて、ChR2発現マウスにおいて青色光照射により神経活動が活性化すること、ArchT発現マウスにおいては緑色光照射によって神経活動が抑制されることを確認した。これらのことから、(1)で開発中のシステムにより、脳深部の神経活動がファイバーを介してin vivo条件下で検出できることが明らかとなった。
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