研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染は肝硬変や肝癌の原因となり、世界的な問題の一つである。HBVは感染肝細胞において宿主細胞の機能を利用して自身の複製を行っているが、未だその詳細については不明な点が多い。特に、ウイルスが細胞内に侵入した後にどのように輸送されるか、あるいはウイルス複製過程においてその構成タンパクやゲノムがどのように輸送され、組み立てられて細胞外に放出されるかについてはほとんど明らかにされていない。本研究では細胞内輸送に必要な機構がどのようにHBVに利用されているか、小胞輸送の分子スイッチと考えられている低分子量GTPaseのRabタンパク質ファミリーに注目して明らかにすることを目的とした。 まず、HBV粒子を恒常的に発現しているが放出されたHBVは再感染しないHepG2.2.15細胞を用いて、HBVの放出に関与するRabタンパク質を同定することとした。61種類のRabタンパク質ファミリーに対するsiRNAライブラリーを用いて、各Rabタンパク質を個別にノックダウンし、培養上清中に放出されたHBV DNAをreal-time PCRで、HBsAgをCLIA法にて定量した。その結果、Rabタンパク質によってHBV DNAを主に変化させるもの、HBs抗原を主に変化させるもの、両者を変化させるものに分けられた。HBV DNAは主にHBV粒子を、HBs抗原はゲノムやコアを含まないHBs抗原粒子 (SVP, subviral particle) の量を反映していると考えられており、HBV粒子とHBs抗原粒子を放出させる経路が異なっていることを示していると思われた。
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