平成26年度は、CD4T細胞への分化決定に重要な1.持続的なTCRシグナルと、それに伴って誘導され2.ThPOK、という二つの因子それぞれが、ヘルパー機能獲得へどのように寄与するのか、CD40Lの発現を指標にして検討した。 1.TCRシグナルの役割について CD4+CD8+胸腺細胞をin vitroでTCR刺激すると、CD40Lの発現が顕著に誘導された。この条件ではThPOKの発現はみられないことから、 CD40Lの発現はTCR刺激依存的に、またThPOKよりも早い時期に誘導されることがわかった。次に、正の選択における選択自己ペプチドへの親和性の異なるMHC-I拘束性のTCRTgマウスを用いて解析を行った。メスのHY-TCR Tgは選択自己ペプチドへの親和性が非常に弱く OTI-TCR Tgは非常に高いことが知られている。これらの二つのマウスから調整した胸腺細胞におけるCD40Lの発現は、強いTCRシグナルを受けた細胞(OTI)では、弱いシグナルを受けた細胞(HY)より顕著に高いことが判明した。以上のことより、CD40Lの発現は、in vivoにおいて、TCRシグナルの強さ依存的に誘導されることがわかった。 2.ThPOKの役割について 機能的なThPOKを欠損するHelper Deficient(HD)細胞は、TCR刺激依存的にCD40Lの発現が誘導されるが、やがてRunx3依存的にCD8T細胞へと分化し、CD40Lの発現も消失することが判明した。そこでRunx3結合サイトを含むCD40L遺伝子上流域のレポーターコンストラクトを作成したところ、Runx3がCD40Lの発現を積極的に抑制する結果が得られた。ThPOKはRunx3の発現を抑制することが知られていることから、ThPOKはCD40Lの発現誘導には必要ないが、Runx3によるCD40L発現抑制を妨げる役割があることが判明した。
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