生体内において、細胞動態は細胞活性を反映する重要な形態学的変化である。細胞の形態学的変化は<細胞外基質蛋白質―膜貫通型蛋白質―細胞骨格>の複合体により制御され、細胞外基質蛋白質はこの意味において重要な役割を担う。申請者は、これまで、ヒトの筋・結合織疾患であるウルリッヒ病などの原因となるVIおよびXII型コラーゲンが、骨形成過程における骨芽細胞の細胞動態(細胞移動、骨基質表面への接着、細胞間コミュニケーション、極性化)を制御することで、骨量を維持する役割を担う事を明らかにしてきた。しかしながら、これらコラーゲン分子の骨芽細胞動態制御機構における分子メカニズムについては未だ解明されていない。本申請研究は、骨芽細胞動態を細胞外基質蛋白質であるコラーゲンにより制御するメカニズムを解明するものであり、骨形成機構における新たな制御機構の解明の一助になることが期待される。さらに、2014年に厚生労働省の専門委員会により指定難病疾患に定められたウルリッヒ病の病態解明に貢献することが期待される。
本年度は、骨形成過程におけるVIおよびXII型コラーゲンの分子メカニズムを明らかにするために、骨形成過程におけるこれらコラーゲンの作用部位の特定を行った。生体内において、コラーゲンは細胞から分泌されると細胞外基質環境に蓄積されることから、生体内における骨芽細胞動態とコラーゲンの関連性を可視化する事は難しい。そこで、初代培養骨芽細胞を用いて、in vitroにおける詳細な局在について解析を行い、VIとXII型コラーゲンの作用部位を特定した。この作用部位において、VIおよびXII型コラーゲンの骨芽細胞動態制御機構についての分子レベルでの役割について、今後検討を行う。
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