研究実績の概要 |
HIV-1 Gag はウイルスの核であるコアを形成するタンパク質であり、感染細胞から出芽後、Protease により6つの機能的なタンパク質に切断され、感染性を持った成熟ウイルス粒子が形成される。 申請者は未成熟および成熟ウイルス粒子を蛍光の違いから区別できるウイルス可視化技術の樹立を目指し、本研究を始めた。Gag の MA-CA 間にFRET に適した蛍光タンパク質の組み合わせである CFP と YFP を HIV-1 Protease cleavage site と共に組み込んだ。ウイルスは出芽後 Protease により、Gag を切断する際に、CFP, YFP も Gag から切り離され、コアの内側に局在する。Protease 欠損株 (deltaPro)では FRET シグナルが高感度で検出された (YFP/CFP=1.22) が、野生型ウイルスの FRET シグナルは deltaPro に比べて有為に低い値を示した (YFP/CFP=0.54)。また、野生型ウイルスでは出芽したウイルス粒子全体の 4.5% が未成熟ウイルスである事がわかった。コアは一般的に密封されているが、一部のコアは閉じきっていない事が報告されている。Gag から切り離された蛍光タンパク質はコアの内側に局在するが、コアが閉じきっていないと外に漏れ出す。ウイルス粒子を界面活性剤で処理しても deltaPro ウイルス粒子のほぼ全てでシグナルは維持された (0.3% 消失)が 、一方で野生型ウイルスでは 50.6% の粒子がそのシグナルを消失し、結果半数近いウイルス粒子はコアが密封されていない事が示唆された。本研究により、成熟ウイルスの可視化及びコアの開閉率を検出するシステムの構築成功した。 今後は本可視化技術を用いてコアの開閉率と感染性の間に相関性があるのかを調べる。
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