本年度においては、研究計画に照らしてβアミロイドに結合することが知られている化合物を10数種合成し、その蛍光標識体の合成も行った。その際、蛍光団とβアミロイド結合部位をつなぐリンカーに関しては、当初考えていた通り長さや形状を含めて複数種用いることにより構造に多様性を持たせた。 一方、当研究室においてL929細胞を用いたネクロプトーシス誘導系を立ち上げ、安定したin cellulo実験を行う準備を整えた。 実際、合成したプローブを用いてネクロプトーシス誘導細胞において蛍光物質の凝集体が観察されるかに関する検討を共焦点蛍光顕微鏡を用いて行った。しかしながら、ネクロプトーシス依存的に明白に凝集体が観察されることはなかった。これは、プローブの水溶性に問題があるためであると考えている。即ち、ネクロプトーシスの誘導を行う以前から蛍光プローブはある程度凝集が認められ、ネクロプトーシス依存的な凝集と区別することができなかった。膜透過性を維持したまま水溶性を向上させた蛍光プローブを合成することが必要である。 研究を始める当初からの懸念として、アルツハイマーのβアミロイド凝集体とネクロソームの凝集体は必ずしも同じ構造ではないことを考えていた。そこで、よりネクロプトーシスβアミロイドに特異的に結合する化合物を得るために、現在、LDHアッセイを利用した細胞死の評価を基準にしてネクロソームβアミロイドに結合する化合物のスクリーニングをin vitroで行うことを計画している。そのために、より多様性を持たせたβアミロイド結合候補化合物の合成を現在行っている。
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