研究実績の概要 |
我々は、正常副腎皮質に対するアルドステロン合成酵素 (CYP11B2)の免疫組織化学により、球状層を含む既知の副腎皮質3層構造に加えて、アルドステロン産生細胞クラスター (APCCと新規命名) を含む新規構造 (斑入り状構造) を同定した (Nishimoto et al., J Clin Endocrinol Metab 2010;95,2296-305)。APCCにおけるCYP11B2発現は強いことから、APCCにおけるアルドステロン合成はレニン・アンギオテンシン系から独立して自律的であることが考えられる。一方で、アルドステロン産生腺腫 (APA) の全エクソンシーケンシング研究により、イオンチャネル・ポンプ遺伝子の体細胞変異 (APA関連変異) が報告された (Choi et al., Science 2011;331,768-72など)。これらの変異は、アルドステロン産生細胞において、細胞内カルシウム濃度上昇および細胞脱分極を惹起し、その結果アルドステロンを自律的に産生させる。我々は、本研究において、「APA関連変異は、APCCにおいてもアルドステロン自律産生に関与する」という仮説を持ち、APCCからAPA関連変異を検出することを目的とした。 42例の正常副腎組織に対しアルドステロン合成酵素の免疫染色を行いAPCCを同定した。23個の大きいAPCC (0.6-1mm大) から肉眼的に組織を採取し微量なDNAを抽出した。APA関連変異が判明した4遺伝子の全エクソンをカバーするプライマーの混合液 (310組のプライマー) を調製後、それを用いて抽出した微量DNAを増幅した。次世代シーケンサーを用いて、これらの増幅産物の変異解析を行ったところ、8個 (34.8%) のAPCCに既知APA関連変異を検出した。本研究により、APCCにおけるアルドステロン合成はAPA関連変異により自律的であることが示唆された。
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