研究実績の概要 |
○研究目的 脳の形態は, 恐竜の知能や能力, あるいは系統関係を考慮するうえで非常に重要な情報を提供するため, 恐竜を研究するうえで脳形態を詳細に調べることは欠くことができない. 成長に伴う形態変化を把握していないと, 正しく脳形態を評価することが難しくなるが, それにも関わらず, 恐竜の生き残りである現生鳥類においてすら, その脳形態が成長に伴いどのように変化するのかその詳細は調べられていない. よって本研究では, 恐竜の脳形態における詳細な研究に役立てるべく, 現生鳥類の脳が成長に伴いどのように変化するのか明らかにしようとした. ○研究方法 現生鳥類の様々な成長段階における脳形態に関するデータを, CTあるいはMRI撮影によって取得し, デジタルモデルを作製した. また, 解剖前の頭部標本においては, CT撮影によってより高精度の画像を得ることを目的に, ルゴール液による染色を試みた. 脳の各部位の体積比を算出するとともに, 定量的に形態を評価するため, 三次元幾何学的形態計測学的手法により, 成長を通してどのように鳥類の脳形態が変化するかデジタルモデルを用いて調べた. ○研究成果 ルゴール液染色では, 標本の状態や溶液濃度ニワトリの脳は成長に伴いより細長くなっていくことが明らかになった. この変化パターンは, 種間でみられるサイズによる形状変化パターンと概ね一致していた. 一方, 脳の各部位の体積比を比較したところ, 成長を通して顕著な変化が見られなかった. つまり, 鳥類の脳は各部位の体積比は変化させずに形状は変化するということを示している. このことから, 恐竜などの古生物においても, より厳密に脳の形状と体積の関係を議論する必要があることがわかった.
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