研究課題
奨励研究
本研究の目的は脳卒中片麻痺患者の神経筋電気刺激(NMES)による肩・肘関節の屈伸運動機能回復訓練装置を開発することである。片麻痺の肘と肩の協調運動実現のためには、まず共同運動から単関節運動を分離する必要がある。運動自由度が多い肩の屈伸訓練は目的以外の肩と肘の運動自由度を拘束し、肩甲骨の動きにも順応すべきである。肘の屈伸訓練は肩の動きを拘束する必要がある。また、目的の随意運動を補助するNMESを併用した訓練を安定的に実現するためにも目的運動以外の自由度方向へ選択的に制限を加え、目的運動を介助する必要がある。本装置は患者の上肢形態に合わせて調整可能であり、肩・肘関節の目的の訓練に応じて運動方向や範囲を制限し、訓練運動を介助する。前腕と上腕各々に対応する2つのリンクと肘と肩の動きに対応する2つの受動関節で構成する。前腕、上腕を支えるリンクとホルダは患者の負担を低減するために軽量なアルミニウム合金製とし、接触部分にはウレタンを使用した。肩関節に対応する受動関節は回転と並進の2自由度を有しており、肩甲骨の動きに順応できる構造とした。なお、肩と肘関節の運動範囲は各々独立してクランプネジで容易に制限できる構造にした。鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンターにおいて、本装置を用いNMESを併用した臨床試験を15人の慢性期脳卒中患者に行った。NMESには伊藤超短波製のES-530を用い、肩は屈曲筋に、肘は伸展筋に運動閾値レベルの低周波電気刺激を手動で与えた。使用波形はツインピーク単相パルス電流、パルス幅は50[μs]、周波数は50[Hz]とした。その結果、上肢FMAにおいて平均5.7ポイント有意に改善した。これは随意運動を補助しながら訓練を行うことで効果的に神経回路の強化を図れたためではないかと考えられる。現在、さらに治療効果の向上を目指すため、訓練動作に連動して自動で電気刺激を負荷するシステムの開発を進め、健常者での試験を実施している。
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Proceedings of the 2015 IEEE International Conference on Mechatronics
ページ: 444-449
第15回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会講演論文集
ページ: 1733-1738
Proceedings of Joint 7th International Conference on Soft Computing and Intelligent Systems and 15th International Symposium on Advanced Intelligent Systems
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