研究目的 寒冷な地域では冬季の地盤中において、凍結(凍上)・融解が毎年繰り返されて、斜面の表層が下方へ移動、または崩壊する事例が報告されている。既存使用の一面せん断試験機の温度制御部分を改良し、省力化して凍結(凍上)・融解を繰返し受ける履歴の有無の挙動を視ることを目的とした。 研究方法 試料は笠岡粘土とファインサンドを重量比1:1で混合し、これを液性限界の約2倍のスラリー状にし、鉛直応力98kPaで一次元予圧密した。 供試体は、直径6cm、高さを4cmに整形し、飽和させてせん断箱内へ挿入する。圧密は鉛直応力12.2kPa(終始一定)を加え、上端面を4℃に下端面を0℃で約20時間保持する。吸排水は上面がらの大気圧である。 繰返し凍結融解履歴は、供試体下端面ヘサーマルショックを与えて氷核を形成し、凍結過程の下端面の初期温度は-0.5℃とし上端面は4℃にて、両端面ともに-0.2℃/hにて24時間で供試体上端まで凍結(凍上)させた。融解過程はこの後、両端面ともに+0.4℃/hにて上端面が20℃に達したら、両端面ともに20℃に20時間以上一定とした。この履歴を各1、2、3、4サイクルと与えた。 せん断は、各サイクルの最後とこの履歴無を、同じ鉛直応力で定圧一面せん断試験(変位速度0.02mm/min、変位6mm)を実施した。 研究成果 凍上量は、1サイクル時の平均13.5mmから2サイクル時の平均12.3mmの僅かな減少があり、これ以降は同じとなった。この後の融解は、1サイクル時は元の供試体と同じ高さに戻るが、2サイクル時は平均0.6mm沈下して、3、4サイクルで元の高さへ戻る傾向となった。 せん断時の垂直変位は、履歴無より各サイクルは大きく、サイクルが増える毎に小さくなり、3、4サイクルで同じとなった。せん断強さについては、2サイクルは他より大きくなったが、他は履歴の傾向は視られない結果となった。
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