研究実績の概要 |
【目的】 生態系に配慮した環境保全林の造成を目的とした潜在自然植生(その土地の環境が支えうる植生)に基づく広葉樹植栽(以下, 広葉樹植栽)が各地で行われている. 福井県においても1970年代から公共事業を中心に広葉樹植栽が行われている. しかし, 福井県においては植栽後の継続的な現況調査は殆ど行われておらず, 各植栽地の遷移状況を示すデータの蓄積には至っていない. そこで本研究では, 植栽後3~15年が経過した福井県嶺北地方の広葉樹植栽地7箇所の遷移状況の解明と, 当初目標に対する目標達成度評価を行うこととした. 【方法】 各調査地において均質な植分と判断される箇所に方形区を設置し, 植物社会学的植生調査および毎木調査を行った. 次年度以降の継続調査のための永久標識を方形区の四隅に設置した. 【結果】 1)植物社会学的植生調査の結果から計167種の維管束植物が認められ, 各調査地の現時点における種組成や構造が明らかとなった. 2)近間に管理(間伐)された区間と放置された区間が近接している調査地があり, 双方で調査を行ったところ, 管理された区間において種の多様性が高いことが明らかとなった. 植栽種は同一のため, 他の地域からの侵入種であると推測される. 広葉樹植栽の管理方法を思索する上での熟考するべき資料が得られた. 3)毎木調査の結果から, 各調査地の生存率や生長量が明らかとなった. 生存率は調査地毎の差異は小さく, 概ね良好であった. 生長量は調査地毎の差異が大きく, 現状確認できる条件の違いとして「多雪地」である調査地の年間生長量は他を大きく下回った. 「多雪地」以外の条件も生長量の差異に関係していると考えられる. 今後の課題として生長量を左右する各種条件の解明に取り組む予定である. 次年度は植物の培地として重要な条件である土壌について同調査地において調査を行い, 土壌の違いによる植生への影響を明らかにしていく予定である.
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