本研究では、高速2液混合を目的としたドーナツ型マイクロミキサーの製作を試みた。ドーナツ型マイクロミキサーとは、流路の断面形状が円形であり、溶液Aの中心部分を溶液Bが同心円状に流れることで2液の接触面積を大きくし、さらに拡散による移動距離を短くすることによって迅速な混合を目指すものである。 フォトリソグラフィで製作したレジストパターンを鋳型にPDMS樹脂で成型を行い、貼り合わせることで製作を行った。具体的な内容を下記に示す。 1. 断面が半円の突起形状でかつ直径の異なるレジストパターンを同一平面上に配置 ガラス基板(40×30(mm))上に、幅が40μm(溶液A)と30μm(溶液B)、長さが縦20mm、横30mmの十字型流路を製作した。レジストには、ポジ型であること、化学増幅型でないこと、厚さが20~30μm塗布できることを選定基準とし、東京応化工業(株)の「PMER P-HA 1300PM」を使用した。 断面が半円の突起形状でかつ直径の異なるレジストパターンの製作は、マスクレス露光装置が有するグレースケール機能を利用して、露光箇所ごとに露光量を調整することで行った。深さに応じた露光量は、あらかじめ実験により求めた露光量とレジスト深さとの関係を示す二次関数を用いて算出した。この技術が可能になることで、形状の面で生体内の血管のより忠実な再現や、流路内に突起を作ることによる混合の促進等が期待できる。 2. PDMS樹脂による成型 製作したレジストパターンを鋳型にPDMS樹脂で成型を行い、半円の溝をもつ流路を対になるように2個製作した。 3. PDMS流路同士の貼り合わせ 成型したPDMS流路の接着面に対して酸素プラズマ処理を行い貼り合わせることで、断面形状が円形の流路を製作する。その際マイクロレベルの位置合わせが必要となるが、これはマスクアライナーの位置合わせ機構を利用して行った。十字型流路の流路末端4箇所を全て合わせることは難しく、大きい箇所で40μm程度の位置合わせ誤差が生じた。
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