○研究目的 : がん性疼痛に用いられているオキシコドンの臨床効果には大きな個人差が存在する。近年、がん患者おける薬物血中濃度の個人差の要因として炎症性サイトカインが注目されており、炎症性サイトカインが肝臓におけるCYP3A4の発現を低下させることが報告されている。本研究では、悪液質と診断されたがん患者を対象に、炎症性サイトカイン濃度とオキシコドン及びその代謝物の血漿中濃度との関係を明らかにすることを目的とした。 ○研究方法 : 浜松医科大学病院において、がん性疼痛に対しオキシコドンによる治療を開始し、文書による同意の得られた30名を対象とした。悪液質の判定は、Glasgow prognostic score(GPS)に基づいて分類した。オキシコドンとその代謝物の血漿中濃度は、LC-MS/MS法により行った。IL-6の血清中濃度は、ELISA法により行った。 ○研究成果 : 対象患者におけるGPSは0が8名、1が10名、2が12名であった。オキシコドンの血漿中濃度は、GPSの増加に伴い上昇傾向が認められた。ノルオキシコドンとオキシコドンの濃度比については、GPSの増加に伴い低下傾向が認められたが、オキシモルフォンとオキシコドンの濃度比については、変化は認められなかった。GPSの増加に伴いCYP3A経路の代謝は減少するが、CYP2D6経路の代謝は変わらないことが考えられた。IL-6の血清中濃度は、GPSの増加に伴い有意に上昇した。GPS増加に伴うCYP3A4経路の代謝減少にIL-6の上昇が関与している可能性が示唆された。
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