悪性リンパ腫などの血液がんに対しては、ビンクリスチン(VCR)を含む多剤併用化学療法が標準療法として行われているが、末梢神経障害が副作用として比較的高頻度に発現することが問題となっている。末梢神経障害はVCRの用量規制毒性であり、重篤化するとQOLを著しく低下させ、回復に数か月を要する場合もあり、その後の治療にも影響を与えることから、末梢神経障害の発症や重篤化を未然に防ぐことは極めて重要である。 VCRによる末梢神経障害の発現頻度およびその重症度はVCRの1回投与量および累積投与量に相関すること、アゾール系抗真菌薬との併用により末梢神経障害の発現リスクが増大することが報告されている。これらの事実は、VCRが高濃度維持されることが末梢神経障害の発現リスクを増大することを示唆しているが、血清中VCR濃度と末梢神経障害発現リスクの関連性については全く報告が無く、同じく血液がんに対して汎用されるメトトレキセートで行われているような薬物動態の個人差を考慮した副作用マネジメントは困難であるのが現状であった。そこで本研究では、VCRを含む化学療法を受けた患者を対象として、VCR投与後の血中濃度を経時的に測定し、末梢神経障害発症リスクとの関連性を解析することを目的として検討を行った。 研究倫理審査委員会の承認を得た後に、2014年4月から11月までの期間にVCRを含む化学療法を受けた患者9名の血清中VCR濃度をLC-MS/MSを用いて測定し、末梢神経障害の発現状況との関連性を解析した。その結果、仮説に反しVCR濃度と末梢神経障害の発現状況との関連性は認められず、末梢神経障害のリスクをVCR濃度のみで説明することは困難であることが示唆された。今後はさらに症例数を増やして検討を進め、VCRによる末梢神経障害のリスク要因を解明することが必要と考えられた。
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