研究実績の概要 |
【研究の目的】昨年度に確立したマウスおよびラット臓器の血管描出透明標本や透明骨格標本、魚類および両生類の全身透明標本を材料として、透明性を維持したまま乾燥状態でも扱うことが可能な標本作製法を確立することを目的とする。 【研究成果】 (1)シリコン置換標本シリコンプラスティネーション標本作製 グリセリン浸漬保存されたアフリカツメガエル透明骨格標本をシリコン樹脂に置換する方法について検討した。実験1 : グリセリン/エタノール混合液→エタノール/ヘキサン混合液→ヘキサン→ヘキサン/シリコン(KE108, 信越シリコン)→KE108→重合。標本は白濁し、激しい収縮が認められた。実験2 : エタノール/アセトン混合液→アセトン→KE108→重合。白濁が著しく、シリコンの置換も不十分であった。実験3 : エタノール/グリセロール混合液→エタノール/キシレン混合液→キシレン→KE108→重合。シリコンの浸透は良く収縮は少なかった。しかし筋肉の白濁が認められ、透明度は損なわれた。実験4 : エタノール/グリセロール混合液→エタノール/アセトン混合液→キシレン/アセトン混合液→KE108/{キシレン/アセトン=1/1)}混合液→KE108→重合。最も良好な標本を作製することができた。しかし、グリセリン浸漬標本に比べ透明度がかなり劣るため、透明度を維持する方法についてさらに検討が必要である。また、標本の収縮防止法について検討が必要である。 (2)液浸標本観察専用容器の試作および標本の固定方法 グリセリン浸漬透明標本をジェルワックスに包埋する方法について検討した。プラスティックディッシュに蓋をかぶせた状態でジェルワックスを充満させて固めることにより、極めて透明度が高い状態を維持した包埋標本が得られた。しかし、硬化時に発生する大量の気泡および硬化後に漏出するグリセリン対策が、今後の課題として残された。
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