研究実績の概要 |
近年, 強度変調放射線治療(IMRT)および強度変調回転放射線治療(VMAT)による放射線治療を行う患者数の増加に伴い, 電離箱線量計・フィルム・多列半導体検出器等を使用した患者毎の線量検証(Patient Specific-QA)に要する時間, 労力が問題となりつつある. 本研究では, 放射線治療計画装置からアウトプットされるDICOM-RT情報に着目し, これらの情報を解析することでPatient Specific QAと同等の検証結果が得られれば, 検証を大幅に省力化可能ではないかと考えた. 前立腺癌(n=10), 上顎洞癌(n=4), 悪性胸膜中皮腫(n=4)へのVMATを対象とし, 作成した放射線治療計画からDICOM-RT planを取得した. DICOM-RT planからガントリ角度, MLC位置、MU情報を取り出し, MATLABを使用して1. degree/MU(単位MU当たりのガントリ移動角度), 2. mm/MU(単位MU当たりのMLC移動距離), 3. mm/degree(単位角度当たりのMLC移動距離)を計算するプログラムを作成した. 各々の治療計画の線量分布検証には二次元半導体検出器MapCHECK2を使用し, 線量検証基準としてガンマ解析を用いた. DICOM-RT解析と線量検証結果を比較した結果, ガンマ解析のパス率と3. のパラメータに相関関係がみられた. VMAT治療計画の複雑性は主に回転中のガントリとMLCの動きによって説明することができ, 腫瘍の大きさやリスク臓器との位置関係, 線量制約などに影響される. 本研究においても, 前立腺癌, 上顎洞癌に比べて腫瘍体積が10~20倍大きい悪性胸膜中皮腫においてガンマ解析のパス率に顕著な低下がみられた. 腫瘍体積が大きい場合, 単位角度あたりのMLCの移動距離が増加することで計算線量と実測線量の不一致を引き起こす可能性があるため, 特に注意が必要といえる. 本研究によってDICOM-RT planのパラメータと線量分布検証結果との関係性が示唆された. VMATでは単位角度当たりのMLC移動距離の増加によって線量誤差を生じる可能性があるが, 従来のPatient Specific QAを行う前にDICOM-RT planからVMAT治療計画の複雑性を推測することができるため, 将来的には省力化ならびにより安全な治療計画作成の一助になると期待される.
|