【研究目的】 ヒト生体における止血機構は、外傷部位での血栓形成や血管修復により失血を防ぎ、全身に必要量の血液を循環させるために重要な役割を果たしている。特に血小板は、初期止血反応において極めて重要な構成要素というだけでなく、血栓形成において一連の反応を誘導する必須の血球成分である。このため血小板の数的な減少あるいは血小板の示す機能異常においては、一次止血に異常を来たし、出血傾向が出現するようになる。本研究課題では、血小板数が減少しても直ちに出血傾向を示す訳ではないことから、止血能は血小板の機能の質にも依存していると仮説を立て、血小板の活性化に伴って血小板表面に発現する抗原(活性化抗原)であるCD62抗原およびCD63抗原を定量的に解析し、血小板数とその活性化の両面から出血傾向との関連性を評価するものである。 【研究の方法】 ・検査材料 : 琉球大学医学部附属病院検査部に提出されたEDTA-2K採血された静脈全血。 ・測定方法 (1)フローサイトメトリー装置を用い、CD62抗原とCD63抗原に特異的なモノクローナル抗体で検体中の血小板を標識した後、分画測定する。 (2)電気抵抗法を測定原理とする全自動多項目血球分析装置を用いて血小板数を測定する。 ・解析方法 : 血小板数の測定結果から、低値群(10.0×10^4/μL以下)、正常値群(11.0~39×10^4/μL)、高値群(40.0×10^4/μL以上)に患者を区分し、CD62抗原およびCD63抗原の発現を解析する。 【研究成果】 男性38人(平均年齢55歳)、女性51人(平均年齢55歳)を解析対象とした。これらについてCD62抗原およびCD63抗原の発現の平均値を算出し、血小板数で区分した3つの平均値の差に統計学的に意味があるかを検定するため一元配置分散分析を行った。CD62抗原陽性のp値は0.6491 CD63陽性抗原のp値は0.5131、CD62抗原、CD63抗原両陽性のp値は0.6913となり、有意差は見いだされなかった。(p>0.05)
|