研究課題
奨励研究
【目的】腫瘍マーカーとして用いられているCA19-9は、ルイス式血液型Le(a-b-)型の患者では感度以下(ほぼゼロ)であることが知られている。CA19-9値はルイス酵素、分泌酵素の遺伝子多型によって規定されるが、遺伝型だけでは説明できない症例もある。一方、健常人の中にも個体内変動が小さい人から大きな人までいろいろあるという報告もある。そこで、健常人ボランティアで遺伝型とCA19-9の変動幅がどのように関係するのかを調べ、CA19-9値を癌の早期診断のマーカーとして使用するために個人の基準範囲・臨床判別値を把握する。また、変動幅の個体間差が遺伝的な要因によるものか、環境的な要因なのかを調査し、遺伝子多型と併せて調べることによって明らかにする。【方法】1)本学倫理委員会に申請し承認を得た後ボランティアを募り、説明・同意を得、月1回全血検体を採取する。2)CA19-9合成に関与するルイス酵素(Le ; FUT3)と分泌酵素(Se ; FUT2)の遺伝子多型を調べる。3)CA19-9の変動幅と遺伝子多型の関係、他の検査結果・生活習慣調査結果との関連性について検討し、個体差の大きさの原因を追及する。【結果】CA19-9依頼のあった消化器系癌患者検体を連結不可能匿名化してパイロット的に使用した。2014年4月1日~2015年3月31日にCA19-9が当院基準範囲以内であった症例を抽出し、他の検査結果も検証した。期間中の対象者1861名のうち、時系列で検索して基準範囲を超えた症例は僅かであった。値が変動したものに関しては関連腫瘍マーカーとは同様の動きを示したが、生化学および血液検査データとは明らかな関係は見られなかった。以上の結果と臨床所見から、基準範囲内であっても変動があった場合は癌の存在(再発)や増大があることが判明した。健常人ボランティアに関しては検証中である。
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Ann Allergy Asthma Immunol.
巻: 113 号: 3 ページ: 295-300