研究実績の概要 |
【研究の目的】自己がん組織に存在する未知の免疫賦活物質が、樹状細胞内のどのような遺伝子を介してCTL誘導に作用しているか調べる。 【研究の内容】 ①自己がん組織と人工抗原WT1を作用させて作製し、WT1特異的CTLを誘導した樹状細胞(2例)。 ②人工抗原WT1のみを作用させて作製し、WT1特異的CTLを誘導できた樹状細胞(3例)。 ③人工抗原WT1のみを作用させて作製し、WT1特異的CTLを誘導できなかった樹状細胞(3例)。 の3群(計8サンプル)に関して、Gene Chip®3' Expression Array解析により遺伝子発現の網羅的解析を行った。 【結果】群②③に比較して群①において著明に発現増強していた(Signal log ratio≧2)タンパク質コード遺伝子は、TNFSF18(Tumor necrosis factor superfamily, member 18)のみであった。 【意義・重要性】TNFSF18は、抗原提示細胞に発現していることが知られている。これまでのマウスに関する実験では、がん細胞上のTNFSF18が制御性T細胞の機能を抑制する一方で、CD8陽性T細胞のエフェクター機能を増加させ抗がん作用を増強させていることが明らかになっている。しかし、二次リンパ組織内では樹状細胞上のTNFSF18とT細胞との相互作用は軽微であると報告されており、また皮膚などの末梢組織中での相互作用については明らかになっていない。 今回の発見は、自己がん組織中の未知の免疫賦活物質が、樹状細胞のTNFSF18発現を増加させ、そのことが樹状細胞のCD8陽性細胞への抗原提示をより効率的にするという新しいメカニズムを示唆している。今後、樹状細胞上のTNFSF18を介した効率的なCTL誘導機序のさらなる解明を行う予定である。
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