研究実績の概要 |
【目的】 救急医療や検視・解剖の現場で使う薬毒物の検査キットにはトライエージやインスタントビュー、我々が開発した検知管等があり、ベンゾジアゼピン(BZO)その他の薬毒物が簡単に検査できる。しかし, 医薬品中毒患者・死者の3割が服用しているフェノチアジン系薬物(PTZ)については、検査できるキットはない。そこで、これを簡単に検査できるキットの開発を行い、もって救急救命や死因究明の一助とする。 【方法】 酸性下でPTZと反応し着色するp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(pDMABA)をシリカゲルにコーティングし、酸性化剤とともにガラス管に充填して「PTZ検知管」を開発、これにPTZを溶解した水溶液を吸引して着色の有無を観察、着色のための最適なpDMABAや酸の種類および濃度、PTZの検出限界等を求めた。交差反応についても検討した。 【結果】 試薬の組成を変えた各種検知管を作製したが、酸性化剤として硫酸を20%シリカゲルにコーティングしたものとpDMABAを5%ケイ砂にコーティングしたものを、先端から順にガラス管にそれぞれ20mmずつ充填したものがPTZ検知管の組成として最適であった。この検知管に7種類のPTZの水溶液を吸引したところ赤、橙、あるいは紫色に発色し、PTZのスクリーニングが可能であった。その検出限界は約1~75μg/mLであり、試料の必要量は200μLであった。pDMABAと反応するとされるBZOや大麻、バルビツール酸系および三環系の医薬品、その他の医薬品、LSD、コカインとは反応しなかった。以上のことから、本検知管は救急医療や検視・解剖の現場におけるPTZのスクリーニングキットとして有用と考えられた。
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