研究概要 |
脳血流測定は種々の神経疾患に対して欠かすことが出来ない重要な検査法の一つである. 我々は新しく開発されたsingle photon emissin CT(SPECT)装置をもちいて放射性同位元素である^<133>Xeの吸入法により非侵襲的な脳血流測定を行なった. これにより従来は不可能であった3次元的な脳血流の把握が可能となり, 患側のみならず健側の状態や, 病変より遠方の血流の以上の検出が可能となった. 脳血管の状態の把握のために炭酸脱水素酵素阻害剤であるacetazolamideによる負荷検査を行なった. 当薬剤は強力な脳血管の拡張作用を有しており, 安全に, かつ容易に検査ができる利点を有している. 本研究で我々はこのSPECT装置が臨床的に有効使用できうるかを検討した. 健常正常人での脳血流量は従来の報告とほぼ同様の数値であった. 負荷検査の基礎となりうるacetazolamide投与による脳血流増加率は32%という結果を得た. 頸部内頸動脈閉塞症症例では, 患側の血流の低下を認めたが, 患側のみならず健側においても脳血管は異常な拡張状態にあることが解明できた. そして, acetazolamide投与による負荷検査が, 血行再建術の適応決定の一つの指標になるという知見を得ることができた. 脳腫瘍の症例では従来の報告とは異なり患側健側ともに血流が増加するという結果を得た. そして, 腫瘍とは離れた部位での血流異常を3次元的には初めて証明することができ, 今まで解明できなかった臨床症状を血流異常として解明することができた. また, 両側の脳血管は異常な拡張状態にあることも証明された. 水頭症では術前後での脳血流の変化を認めることができなかった. しかし, 術後の臨床症状の改善の良否と術前の脳血流の間には関連があることを示唆する所見を得た. 以上, SPECT装置を使用した^<133>Xe吸入法による脳血流測定は臨床的に有用であり, 今後さらに臨床応用されるものと考えられた.
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