研究課題
一般研究(A)
本研究は(1)わが国の中規模都市(人口50〜300万)の社会構造および住民運動の実地調査をおこない、(2)各都市の歴史的背景、特に城下町であったかどうかという背景から、社会構造の特色を明らかにし、(3)コンピュータを利用した都市の社会構造のデータならびに研究文献の情報検索システムを開発し、統計分析を試みようとするものである。58年度にはじまる今回の調査では、神戸、堺、名古屋の三都市を中心に実地調査および比較分析をおこなうとともに、全国の人口20万人以上の都市105都市のデータを使った因子分析をおこない各都市の個別形態の分析をおこなった。社会構造の比較分析においては、神戸、堺、名古屋それぞれの都市が、その政治構造、経済構造、住民組織、住民運動、住民の意識の面において、かなり異なる多様性をもっていることが浮き彫りとなった。そして、これらの多様性は、各都市の産業化の方向、時期という経済発展の違いによって、その大枠が規定されている。と同時に、例えば都市の政治と住民組織との関係をとりあげてみても、各都市の町村合併の経緯や時々の行政の方針の違い等が、かなり大きな要因として作用していることが明らかになった。結論として、各都市の社会構造の特徴の差異は、これら諸要因を規定する都市の歴史的背景の所産であるとする視角の有効性が確められた。一方、コンピュータを利用した統計分析においては、全国105都市の因子分析を、1980年、75年のデータについておこなった結果、日本の中枢都市・地方中核都市とその周辺部に位置する諸都市とでは、きわめて対照的な都市構造パターンを有することが明らかにされた。名古屋をはじめとする中枢都市は商業因子が突出した構造をもつのに対し、堺をはじめとする周辺都市は工業、所得、非定住性、稠密因子の突出する工業都市であるか住宅都市であることが示されている。これに対し神戸は、大津とともに、日本の都市の平均的構造に近いパターンをもつ。
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