研究課題
一般研究(A)
ヨーロッパの歴史は古代以来、外部世界からの影響のもとに、また逆に外部世界へ進出しつつ展開してきた。しかし、ヨーロッパとその外部世界との関係の様態や意味は各時代によって大きく異っている。本研究では、ヨーロッパ史研究者ばかりでなく、イスラム世界の歴史や日本史の研究者の参加をも得て、また歴史だけでなくヨーロッパ文学や思想の専門家も交えて、ヨーロッパと外部世界の関係を様々な側面から考察しようと試みた。各研究分担者は、それぞれの役割分担に応じて研究文献・史料の調査収集につとめ、またそれらの分析・考察を行なったが、地域的にも時代的にも規模の大きい研究対象であり、分担者の各々のテーマについても国内外に莫大な関連の研究が蓄積されているために、所定の期間において充分検討できる課題は限られているが、それでも当該テーマのいくつかの重要な問題が解明されたことは確かである。ヨーロッパは今日、かつての世界に冠たる存在ではなく、諸世界の中の一世界にすぎないものとなっている。こうした厳然たる事実は、ヨーロッパ史の見方にも大きく影響している。研究代表者が研究成果報告書の「はしがき」で述べているように、本研究の重要な意義の一つは、こうした状況をうけて、捉われない非ヨーロッパ世界の眼をもってヨーロッパとその外部世界を持察した点にある。単純なヨーロッパ中心史観や外部世界の影響を極力過小視した国民史・自国史的叙述を相対化し、新しい歴史像の形成へと向かう基礎を提供しようとしたことである。研究成果報告書には、各分担テーマに沿った11論文を収録したが、そうした個別テーマの考察を通じて、あるいはそれを越えて、本研究はかかる重要な意味をもったと自負する。これをさらに有意義なものとするには、近い将来いま一度共同研究の機会が与えられ、今回の成果に立った研究の深化が望ましいであろう。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)