研究概要 |
北大圃場土および北農試圃場土に生育するテンサイの根面微生物相を経時的に測定、比較した。温室でポット栽培したテンサイの根面微生物は、発芽後3週目まで増加しつづけ、その後はほぼ一定菌数を保った。菌類、放線菌、細菌、Pseudomonas,Bacillus,Agrobacteriumは両土壌間でほとんど差がなかった。Fluorescent Pseudomonasは農試土で多かった。農試土で紙筒育苗後、両圃場に移植し、1カ月毎に根面微生物を測定したが、温室実験の結果とほぼ同様であった。この場合にはFluorescent Pseudomonasの菌数にも大差はなかった。これらから1026菌株を分離し、テンサイ苗立枯病菌と培地上で対峙培養して、抗菌性を調べた。抗菌性を示す菌の割合は農試上で高かった。いずれにしても、立枯病菌に抗菌性の微生物は両土壌のテンサイの全生育期間中根面に存在し、いつでも分離できることがわかった。抗菌性細菌の多くはfluorescent Pseudomonasで、次いでnon-fluorescent Pseudomonas,Bacillusであった。1026株のうちAphanomyces cochlioidesに抗菌性のものは145株(14%)で、明瞭な阻止帯を形成し、何らかの抗菌性物質の存在が示唆された。A.cochlioidesに抗菌性の細菌の多くはPythium spp.,Rhizoctonia spp.に対しても抗菌性を示した。抗菌性の強い細菌47株を選び、これらをテンサイ種子に接種して紙筒に播種、4週間栽培して、発芽、生育、苗立枯を調べた。バクテリゼーションによって、発芽の促進されるもの、茎葉重の増加するもの、根重の増加するもの、この両者の増加するもの、苗立枯の減少するものなどがあった。発芽促進効果のあるものは、立枯病率が低かった。細菌のなかにはテンサイの生育を阻害するものもあった。本実験での立枯病防除効果は、主としてPythiumに対するもので、生育初期の効果が重要であった。発芽促進、生育促進、立枯病抑制に効果のある細菌12株を最終的に選択したが、その多くはfluorescent Pseudomonasであった。
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