研究概要 |
生体硬組織、特に骨および歯のセメント質の基質線維構造とよく似ており、機械的強度,圧縮,曲げ,弾性,靭性,密度などが骨に近く、しかも、その基質線維構造内部に三次元的な交織をもつ生体組織を誘導生成するような新しいタイプの歯科インプラントを開発することが本研究の目的であり、そのために、インプラント表面に微細ラーメン構造層をもつ炭素質人工歯根(FRS炭素質インプラント)を製作した。そして、その生体反応について細胞レベルおよび動物内への埋入実験により検討して、本インプラントが、生体内で生体組織との間に強力な結合を起こし、天然歯の場合と非常に類似した支持組織が誘導されることが明かになった。研究の展開は以下に示す通りである。 1.FRS炭素質インプラントの調製とその材料学的性質: 芯材用として炭素線維/炭素複合材(FCRC)棒の2〜3mm【'!φ】のものを用い、曲げ強度150MPa,圧縮強度100MPa以上を保証し、ついで、その表面に100μm以上の空孔径と50%以上の空隙率を有するFRS層を構築し、低温気相熱分解炭素含浸により、芯材と強固に接着して所期の性質をもつインプラントを得た。 2.FRS炭素質インプラントの生体親和性の検討と動物体埋入: (1).培養株細胞L1210,L181,Sq79ならびにラット胎児calvaria培養組織に対する態度、コロニー形成能を指標とする検討で、本インプラント材の細胞親和性が良好であること、また、培養骨由来の線維芽細胞がFRS層の内部に侵入生育することを確めた。 (2).猿長管骨への埋入実験により、FRS炭素質インプラントはそのFRS層内に石灰化を起し得た。その剪断接着強度は埋入後経月的に急激に上昇し、術後2ヵ月で平均131Kg/【cm^2】、7ヵ月では平均225Kg/【cm^2】であった。対照のチタン円柱は術後2ヵ月で2.0Kg/【cm^2】である。振動解析では、生成した周囲膜は天然歯根膜と類似の性質を示す。
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