研究概要 |
本研究では研究組織を1絵画班,2彫刻班,3工芸班,4中国美術班に分けた。本研究課題における第2年度である本年度は、中世近世美術の基準作例に関する調査、研究資料収集を前年度に続いて実施した。四班のうち絵画班と彫刻班とが作品の現地調査を行うことができた。 1絵画班は(1)重要作品調査と(2)画中画資料の収集の二面から研究を進め、(1)では高僧伝絵と社寺縁起絵の分野について大分・永福寺蔵遊行上人縁起絵,大分・柞原八幡宮蔵由原八幡宮縁起,大阪・逸翁美術館蔵八幡大菩薩御縁起を調査し、同一主題の表現の比較研究資料を集め、障屏画について神奈川・三溪園所蔵襖絵を調査し、近世における室内装飾の趣向を検討する資料を得ることができた。(2)においては絵巻物に描かれた画中画資料を絵画班全員で検討し様々な角度からの検索に応じられるようにパーソナル・コンピュータを用いた整理分類を行うための作業を前年度に引続き実施した。 2彫刻班は在銘像を中心とした基準作品を検討するため大阪・藤田美術館蔵地蔵菩薩像、同大心寺蔵阿弥陀如来像他を調査した。また、古様を見せる長崎・宝円寺旧蔵降三世明王像をファイバー・スコープにより調査し延宝8(1680)年の造像であることをつきとめ、中世から近世への様式展開を考察する上での資料を得た。 3工芸班は前年度に調査した片倉家伝来染織品その他について近世染織品との比較研究と資料整理を行ない、4中国美術班も前年度に調査した大阪・個人蔵、長崎地方所在の舶載中国絵画関係資料を整理し日本の絵画書蹟に与えた影響を検討した。各研究班とも本研究によって得られた研究資料に基づき「美術研究」誌上にその研究成果の一部を発表した。本研究によって蓄積された資料を基に、今後更に画中画研究、伝統的図様の展開に関する研究を重点的に行なえば、本研究は多くの成果を提供しうるであろう。
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