研究概要 |
2年間の本研究において これまでのような各個別研究,宗教史,政治史,といったわくをこえた学際的領域の総合研究の方向がまとめられた。 日本史の分野では、石田を中心として、鶴岡,貫,沼田,が、古代から、幕末までの 日本における宗教権威の問題を扱った。石田は 日本古代、奈良仏教の成立と、奈良の天皇権力との関連について新しい視角から問題提起をおこなった。とくに、既成の奈良仏教ではない、山林修行の新たな修行者の動きを注目すべきだ、とといた、鶴岡は、八幡信仰について論じ、八幡神と武家政権とのかかわりについて新しい知見を述べ、まとめた。貫は中世における皇室の権威にふれ、一種の宗教権威としての皇室の権威を新しい視角から綜合的に論じた、沼田は幕末の国家思想にふれ、宗教と政治の問題にかかわる重要な史料を発見し紹介した。 近代以前の日本における宗教と政治に関して、本研究では、従来までのそれにみられるばあいとちがって、史料上、広く、多角的な視野から分析を行い、近年、わが国の研究においてもみられる社会史、民衆史研究の方法もとり入れて研究成果をまとめた。 さらに本研究において、独創的な点は、中国,ヨーロッパ,インド,ラテン・アメリカ等の社会の宗教と政治の問題を比較の点でとり入れたことである。今野は、中世ヨーロッパ,キリスト教世界にふれ、加茂はラテン・アメリカ世界にふれ、小名はインド世界にふれた。また、宇都木,奥崎は、日本に深くかかわる中国世界の問題をあつかい、気賀は、幕末の日本におけるキリスト教布教の問題をあつかった。 こうした比較史研究は、本研究においてはじめてなされえた総合的分野であり、新しい知見をえたが、なお、実証面においては重要な問題が残されている。
|