研究概要 |
β-ガラクトシダーゼ(β-D-ガラクトシド・ガラクトハイドロラーゼ)をラクトースに水溶液中で作用させると、加水分解とともに、ガラクトース転移反応を触媒して、夛種類のガラクト少糖を生成する。これらの少糖はβ-ガラクトシダーゼの作用によって加水分解されにくいため、経口摂取すると、分解されずに下部消化管に到達し、そこで資化されてビフィドバクテリウムなどの有用腸内細菌の増殖に寄与するが、さらに便性改良の効果もあるため、生理的機能を有する少糖として、その生成と化学構造の究明が俟たれてきた。本研究においてはこれらの諸点の解明が行なわれた。 まず各種起源のβ-ガラクトシダーゼによるラクトースからのガラクト少糖の生成量を比較し、Aspergillus oryzae由来のβ-ガラクトシダーゼが、Arp.niger,牛肝臓,Escherichia coliおよびKliyueromyces fragilis由来のそれよりも、夛量のガラクト少糖を産生することを明らかにした。 そこで、Arp.oryzae β-ガラクトシダーゼをpH4.8において作用せしめ、生成したガラクト少糖を活性炭・セライトに吸着させ、15〜50%エタノールで逐次溶出を行なって、ガラクト少糖を粗分画した後、調製用瀘紙クロマトグラフィーによって、精製し主要な三糖、四糖および五糖をえた。ついで、これらをメチル化分析、質量分析、【^(13)C】-NMR分析にかけて、その化学構造を3′-galactosyl-lactose,6′-galactosyl-lactose,4,6-digalactosyl-lactose,O-β-D-galactosyl-(1-6)-O-β-galactosyl-(1-6)-lactose,O-β-D-galactosyl-(1-6)-O-β-galactosyl(1-3)-lactose,O-β-D-galactosyl-(1-6)-O-β-D-galactosyl-(1-6)-D-galactosyl-(1-6)-lactoseであると決定した。
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