配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1986年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1985年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1984年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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研究概要 |
前年までの研究結果に基づき,本年度は長期不妊の乳牛に最も多い「授精はされるが受胎しない」すなわち授精後の黄体形成不全に対するホルモン療法プログラムを作成し,145頭の乳牛について野外試験を実施した。また,三か年の研究期間を通じて集積した多数の各種不妊症乳牛の臨床データ及び内分泌データを,多変量解析の方法を応用して解析し,内分泌的に裏付けのある生殖機能の臨床診断法の完成をめざした。その成績を以下に概説する。 1.授精後のホルモン療法の効果 授精が行われた発情日(day 0)から5〜7日(day 5〜7)後に人胎盤性性腺刺激ホルモン(水又は油性hCG)剤及び豚下垂体前葉性性腺刺激ホルモン(卵巣注射用APG)剤を投与し,対象個体のその後の臨床所見,妊否及び内分泌状態を調査した。その結果,授精後の黄体形成不全のものに,上記のホルモン剤(hCGは300iu,APGは2mg)を投与すると,受胎成績が著るしく向上すること,薬剤による効果の差はみられないが,投与日による有意な差があり,授精後のday5が最も効果的であることが明らかとなった。不妊期間の長短による受胎成績の相違はみられなかった。内分泌的には不受胎群に比して,受胎群ではすでにday10で血中プロゲステロン濃度の有意な高値がみられ,子宮の生存胚の識別がday10以前のかなり早い時期に行われることが示唆された。以上,長期不妊症牛に最も多い黄体形成不全に対する効果的治療の一つを作出することができた。 2.直腸検査を中心とする診断法の吟味 近年は超音波による生殖器の画像診断も可能となったが,野外での多数の不妊牛の診断には,今後も直腸検査が主力として用いられることに変りはない。本研究では,多数,多種の不妊症牛の内分泌的情報と臨床所見情報を多面的に分析し,客観的に総合化した臨床所見から血中のプロゲステロン及びエストロゲン濃度の推定と,さらに各種の卵巣状態の判別を可能とした。
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