研究概要 |
脊椎動物平滑筋収縮の【Ca^(2+)】制御が、ミオシン軽鎖のリン酸化を介しておこなわれていると多くの研究者が主張している。我々はこれに対しアクチン結合タンパクである、ライオトニンの作用が生理的な機構であると主張してきた。本研究でキナーゼ活性と収縮の活性化に一致しない点が見い出された。 1.タンパク分解酵素処理による収縮の活性化とミオシン軽鎖リン酸化作用の乖離……【V_8】プロテアーゼ,CANP,トリプシン等のタンパク分解酵素で収縮活性化分画を処理すると、収縮の活性化は著しく抑制される。一方キナーゼ活性はほとんど阻害をうけない。 2. 化学修飾による両作用の乖離……Lys,Tyr,Cysの各アミノ酸残基を化学修飾すると(【I】)と同様に収縮作用のみが阻害をうけ、キナーゼ活性への影響は少ない。 3. pH依存性の相違……ミオシン軽鎖のリン酸化反応はpHを 6.8から8.0へ変えてゆくと易激な抑制をうける。 一方収縮反応の活性化はこのpHの変化にほとんど影響をうけない。 4. 牛平滑筋(大動脈,胃)のキナーゼ分画には分子量150Kと 135Kの成分が含まれる。150K分画はライオトニン作用が強く135K成分はキナーゼ活性が強い。150K成分に特異的なモノクローン抗体が取れ、この抗体によって収縮作用は抑制されるが、リン酸化活性化の抑制はなかった。 これらの結果は全てミオシン軽鎖のリン酸化と収縮の活性化反応が相関しないことを示している。ライオトニンによる生理的な収縮活性化の分子機構は今後の主要な課題として残されている。
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