研究概要 |
いわゆる膠原病群の中で量的質的に大きな部分を占める難治性炎症性疾患には常に免疫異常の影がつきまとう。これらの病態とその病因は極めて複雑で、一次的な病因に二次、三次の反応が重なり病像が進行してゆく。近年の免疫学の進行は、これらの疾患の一次的あるいは求心的部分の異常のいくつかを説明してくれるようになったが、それにより細胞組織が破壊されてゆく遠心的部分、例えば肉芽腫という破壊と増生の入り混った病像が何故生体のフィードバック機構がかからず進行してゆくのかといった点はなお、不明である。我々はこれらの機序を、破壊する側の細胞とされる側の細胞および増殖するintrinsicな細胞間の相互作用からなるcell sociologyの立場から捉え、上述の問題の解明を試みた。 1,SLE,PN,RAに代表される免疫病の病像の基本型である(1)糸球体腎炎、(2)血管炎、(3)肉芽腫、についてその浸潤細胞、増殖細胞、免疫複合体を主に単クローン性抗体を用いた免疫組織学的解析を行った。 2,これらの病像の発現と進行に重要な役割をはたすと考えられた宿主要因として(1)免疫複合体、(2)レトロウィルス、(3) クロファージ、(4)T細胞由来調節因子をとりあげ、以下に概略する如く、新しいアプローチと方法論をもって、これらの組織傷害機序における重要性を明確にした。(1)では単クローン性抗体の分子的マニプレーションを通じて免疫複合体機能の発現機構を解析、またループスマウスの免疫複合体の化学的性状を分析した。(2)ではレトロウイルスの細胞膜抗原修飾による動脈炎発症機序を免疫病理学的、ウィルス学的見地から明らかにした。 (3)では肉芽腫性炎の発症におけるマクロファージの機能異常の重要性とその機能を制御する因子の異常の存在を示した。 (4)ではT細胞産生因子が難治性炎症において一方では増悪因子として、他方では機能回復因子として働く事実を示した。 以上、免疫応答調節異常から来る難治性炎症性疾患としての実験モデル系を確立した。
|