研究概要 |
初年度は 犬を用いて体外循環下に心肺同時移植を行なった。20回以上の急性実験を行ない、さらに、犬を用いて心保存、心肺保存の実験も100回行なうことにより、以下の諸点を確立 またはあきらかにすることができた。 1)移植心は 単純浸漬保存法によっても4〜6時間の安全な保存が行ないうる。2)移植用心肺の保存、とくに肺組織の保存にあたっては、潅流液は 生理食塩水,hactated Ringer液よりもEuro-Collins液の方が良好な結果が得られる。 3)移植用心肺の浸漬保存液も 生理食塩水よりもEwro-Collins液の方が良好な結果が得られた。4)犬を用いた心肺同時移植は、出血などの合併症がなくとも、全例が心不全または肺水腫にて死亡し、生存時間は24時間未満であった。とくに肺水腫が死因の多数例を占めた。4)心肺同時移植における肺水腫の発生は、donor心肺剥離中または、心肺保存中におこる変化ではなく、心肺移植再潅流後におこる変化である。そしてその変化は再潅流後1時間以内々発生する。 5)10〜15kgの犬では 輸血をなしに体外循環下に心肺同時移植が可能であった。6)実験的心肺同時移植の手技ならびに補助手段を確立した。 以上の結果をふまえて、60年度はニホンザルを用いて心肺同時移植を行なった。B回の実験を行ない最長生存期間は12日であった。死因は拒絶反応2例,心不全5例,技管後のhypoxia2例,肺水腫1例他3例であった。Cyclospirin Aの投与により生存期間の延長を認めたが拒耐反応の診断と治療には未だ充分な経験が得られず、長期間の生存には至らなかった。この点が今後の問題点と考えられた。
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