研究概要 |
ペルオキシダーゼ〔EC.1.11.1.7〕は、ヘムを補欠分子族として結合する蛋白質で、過酸化水素による各種水素供与体の酸化を触媒する。この酵素は、生物界に広く分布し種々の基質に対し触媒活性を有することから、生化学的には古くから研究されてきた。一方、ペルオキシダーゼの構造に関する研究はまだほとんど報告例がない。本研究は、大麦若葉の抽出液からペルオキシダーゼを抽出精製し、その結晶化を行い、単結晶X線回折実験を行うことを目的としている。 ペルオキシダーゼは大麦若葉の抽出液から精製され、等電点の異る7個のアイソザイムに分離された(等電点はそれぞれ6.3,6.8,7.4,8.3,8.5,8.7,及び9.3である)。いづれのアイソザイムも同じ分子量44,000ダルトンで、1個のプロトヘムと約20%のオリゴ糖を含んでいる。その内、比較的分離が容易で収率、比活性ともに高い等電点7.4及び9.3のアイソザイムについて結晶化を試みた。種々の結晶化条件を試みた中で、ポリエチレングリコール4.000を沈澱剤とするミクロ透析法によって等電点9.3のアイソザイムの褐色板状結晶が得られた。そのX線回折写真より、おおよその単位格子定数は52,55及び141Åと決定された。単位格子中に4個のペルオキシダーゼ分子が含まれているとした時の単位分子量当りの単位格子の体積,Vm,は2.4【Å^3】1ダルトンで、これはこれまでに報告されているVmの値1.68〜3.53【Å^3】1ダルトンから考えて妥当な値である。現在更に詳細なX線回折実験を行っている。 大麦若葉の抽出液から、スーパーオキシドジスムターゼ及びフェレドキシン-【NADP^+】オキシドリダクターゼの抽出、精製を行い、結晶化を試みたところ、いづれもX線回折を記録できる結晶を得ることができた。
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