研究概要 |
昭和59年度より3年間継続した本研究では、ビームガイドの技術を応用し反応生成イオンのエネルギー分析を飛行時間分析で行えるタンデムビームガイドの開発に取り組むとともに、平行して同じくビームガイドの技術を応用したOPIG法で各種衝突系における反応断面積を0.1〜1000eVのエネルギー領域で測定し、低エネルギー電荷移行反応の反応機構解明が行われた。 1.【Ar^(2+)】,【Ar^(3+)】-Ar,【Kr^(2+)】,【Kr^(3+)】-Kr衝突系における電荷移行反応の断面積測定から、2価イオンのみならず3価イオンにおいても対称共鳴型多電子移行反応がとりわけ低エネルギー領域で主要な反応であること、そして、その断面積は、電荷数が大きい程大きいという全く新しい知見を得た。 2),【Ne^(2+)】,【Ar^(2+)】,【Kr^(2+)】-He衝突系では、1電子捕獲反応は、ほぼ、ポランシャル交差モデルを用いたLandau-Zener計算結果で定性的に説明できることが立証できた。 3),【H^+】,【H2^+】,【H3^+】-【H_2】衝突系で生ずる18種類に及ぶイオン分子反応の反応径路を分離し、各部分断面積を求めることに成功した。 4),【Ne^(2+)】-【n_2】,【n_2】の分子標的における断面積の測定を行うとともに、イオン分光法にて、【nE^(2+)】-【N_2】衝突で電荷移行反応で生ずる【Ne^+】イオンのエネルギー分析を行い、イオンの内部状態を識別した反応機構の解明ができた。分子標的の多価イオンの電荷移行反応の断面積は、分子のイオン状態への遷移におけるFranck-Coudou facterのみならず、原子標的の場合と同様にポテンシャル交差位置に敏感な電子遷位確率に依存していることが明らかにされた。また、【N_2】標的においては、内殻20g価電子の電子捕獲が起っていることなども新しく発見された。
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