研究概要 |
全塩素化有機化合物(TOX)、トリハロメタン類(TT.HM)の生成過程に関する動力学的な検討を行い次の様な成果を得て、生成量、生成過程を充分な精度で表現し、予測評価することが可能になった。 1)自然水系、都市用廃水系等におけるTOX,THM生成の前駆物質となるものはフミン質類であり、紫外部260nmの吸光度(【E_(260)】)で特徴付けられる溶解性有機炭素化合物(DOC)で定量的に評価し得る。 2)TOX,THMの生成過程は、上記フミン質類に存在する塩素反応の活性点を反応速度の大小によって、三種類の活性点群に分画して扱えばよく、【E_(260)】の値で全前駆物質量を定めて添加塩素がどのようにこれらの反応点に分配されるかを論ずれば良いので、前駆物質の由来や分子量の大小などにはほとんど無関係である。 3)塩素とフミン質類の反応を、TOX生成の第一段階とTHMへの加水分解の第二段階の遂次反応とし、上述の三活性点群のそれぞれについて反応の進行を考える三成分並列遂次反応モデルによって現象がよく表現される。 4)添加塩素が三群の活性点に分配される割合は【Cl_2】/【E_(260)】比によって定まることを明らかにし、【Cl_2】の添加比が大となるほど低反応速度の活性点群がTOX,THM生成に寄与してくることを明らかにし、分配図を作製した。 5)TOX,THMの最大生成量に達するには常温で数十時間から十日にも亙る反応時間が必要であるが、80℃の昇温で1時間以内の反応時間で最大値に達することを明らかにし、標準試験法を提案した。更に多くの実験から【E_(260)】と【Cl_2】の比を与えるのみで最大TOX,THM生成量を求める式を示した。 6)最大生成量と塩素分配率の図を用いて、【Cl_2】/【E_(260)】比が与えられれば、TOX,THMの全生成過程を直ちに計算する方法を確立した。 7)多くの例でその正確さを実証した。
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